概要
製造工程では、あらかじめ決められた生産計画どおりに作業が進むとは限りません。通常は製品Aを生産しているものの、急ぎで製品Bの注文が入った場合には、製品Aの作業を一時的に中断して応援に向かい、製品Bを優先して生産することがあります。製品Bの生産が完了した後は、中断していた製品Aの作業へ戻り、残りの工程を再開します。
本記事では、このような作業を「応援作業」と呼びます。応援作業は、特急品や緊急注文への対応、設備トラブルによる応援、納期遅延を防ぐための優先生産など、さまざまな場面で発生します。しかし、応援を行うと、通常品の生産が遅れたり、作業員の負荷が偏ったりする可能性があります。
そのため、応援作業を含む生産計画を検討する際には、単に優先順位を設定するだけではなく、
- どのタイミングで通常作業を中断するのか
- 応援に入る作業員はどのように移動するのか
- 応援先では複数の作業員がどのように協力するのか
- 応援終了後に元の作業をどのように再開するのか
といった条件まで考える必要があります。
今回は、部品Aから製品Aを組み立てている途中で、部品Bから製品Bを組み立てる作業を割り込ませるモデルを作成します。assimeeを使って、通常作業の中断、別工程への応援、共同作業、元の工程への復帰という一連の動きを再現し、その動作を検証します。
モデル
今回用意したモデルは以下の通りです。

このモデルには、製品Aを組み立てるラインAと、製品Bを組み立てるラインBがあります。
ラインA
ラインAでは、部品Aから製品Aを組み立てます。
通常時は作業員AがラインAを担当し、製品Aの注文に応じて組立作業を進めます。
製品Aの組立時間は、1個あたり合計10分です。
ラインB
ラインBでは、部品Bから製品Bを組み立てます。
通常時は作業員BがラインBを担当します。ただし、製品Bは優先度の高い製品として扱い、注文が入った場合には作業員AもラインBへ応援に入ります。そのため、製品Bの注文が入ると、作業員AはラインAで行っている製品Aの組立をいったん中断し、作業員Bと協力して製品Bを組み立てます。製品Bの組立が完了した後は、作業員AがラインAへ戻り、中断していた製品Aの組立を再開します。
ラインAの工程を3つに分割する
製品Aの組立中に製品Bの注文が入ったとしても、作業員Aがその瞬間に手を止めて移動するとは限りません。
実際の現場では、
- 特定の部品の取り付けが終わるまで
- 仮組みが完了するまで
- 検査前の状態になるまで
- 作業台を安全な状態に戻すまで
といった、作業を中断しやすい区切りが設定されていることが一般的です。そこで今回は、10分かかる製品Aの組立作業を、次の3工程に分割します。
| 工程 | 作業時間 |
|---|---|
| 前工程 | 3分 |
| 中間工程 | 4分 |
| 後工程 | 3分 |
| 合計 | 10分 |
製品Bの注文が入った場合、作業員Aは現在実行中の工程を最後まで完了させてから、ラインBへ移動します。
例えば、製品Aの中間工程を開始した直後に製品Bの注文が入った場合、作業員Aは中間工程の4分間を終えてから応援へ向かいます。このように作業を複数の工程へ分割することで、完全に即時の中断ではなく、現場で行われる「キリの良いところまで作業してから移動する」という動きを再現します。
製品Bの作業を工数へ分解する
製品Bの組立時間は、1個あたり30分です。製品Bは作業員Aと作業員Bが協力して組み立てますが、製品Bの注文が入ってから作業員Aが到着するまで、作業員Bが何もせず待機するとは考えにくいです。通常は、作業員Bが先に組立を開始し、作業員Aが到着した時点から2人で作業を進めることが多いと考えられます。この動きを再現するため、製品Bの30分間の組立作業を、1分単位の工数30個に分解し、作業員が1分間作業すると、工数を1個処理するものと設定します。
この設定により、作業員Bが1人で作業する場合は、1分間に1工数が処理されます。作業員Aが応援に入り、2人で作業する場合は、1分間に合計2工数を処理できます。例えば、作業員Aが応援に入るまでに作業員Bが5分間作業した場合、30工数のうち5工数が完了しています。その後、残り25工数を2人で処理するため、1人で作業を続ける場合よりも早く製品Bを完成させることができます。
作業を工数へ分解することで、
- 作業員Bが先に作業を開始する
- 作業員Aが途中から参加する
- 2人で並行して残りの工数を処理する
- 作業完了後に作業員Aが元のラインへ戻る
という一連の動作を表現できます。
応援作業の流れ
今回のモデルにおける応援作業は、次の流れで進みます。
- 製品Aが入荷する
- 作業員AがラインAで製品Aの組立を開始する
- 製品Bの注文が入る
- 作業員BがラインBで製品Bの組立を開始する
- 作業員Aは製品Aの実行中の工程を完了させる
- 作業員AがラインBへ移動して応援に入る
- 作業員Aと作業員Bが製品Bの工数を並行して処理する
- 製品Bの組立が完了する
- 作業員AがラインAへ戻る
- 中断していた製品Aの次工程から作業を再開する
この流れをシミュレーションすることで、優先製品への対応が通常製品の生産へどのような影響を与えるのかを確認できます。
シミュレーション結果
シミュレーション時間480分、サンプリング時間60分でシミュレーションを実行すると、結果は以下の通りとなります。


シミュレーション結果のステータス推移からは想定した通り以下の動きが時系列で確認できます。
- 最初に入荷した製品Aから組立作業が開始
- 作業員AはラインAで製品Aの前工程を進める
- 製品Aの次工程が始まる前のタイミングで製品Bの注文が入る
- 製品Bの注文が入ると、作業員BはラインBで製品Bの組立を開始すると同時に、作業員Aへ応援の要求が発生
- 作業員Aは、製品Aの作業を中途半端な状態で停止するのではなく、現在担当している工程を完了させてからラインBへ移動(1分)
- ラインBへ到着した後は、作業員Bと協力して製品Bの残り工数を処理
- 製品Bの組立が完了すると、作業員AはラインAへ戻り、中断していた製品Aの組立を再開
以降も製品Bの注文が入るたびに、作業員Aは製品Aの前工程、中間工程、後工程といった区切りの良いタイミングでラインBへ応援に入っています。シミュレーション結果から、設定した応援ルールに従って、作業員Aが通常作業と応援作業を切り替えていることが確認できました。
応援作業が生産計画に与える影響をシミュレーションで検証
応援作業は、今回、優先製品と設定した製品Bの納期を短縮するうえで有効です。ただ、製品Bの注文頻度が低ければ、ラインAへの影響は限定的ですが、製品Bの注文が連続して入る場合には、作業員AがラインAへ戻る時間が少なくなり、製品Aの仕掛品が増える可能性があります。また、製品Aの工程をどの程度細かく分割するかによっても、応援へ向かうまでの時間は変わります。工程の区切りが長い場合、作業員AがラインBへ到着するまでの時間が長くなります。反対に、工程を細かく分ければ早いタイミングで応援へ移れますが、生産条件は複雑になります。実際の現場では、
- どこで作業を中断できるのか
- 中断した作業を安全に再開できるのか
- 応援先までの移動に何分かかるのか
- 複数人で作業した場合に、処理速度がどの程度向上するのか
- 優先注文がどの程度の頻度で発生するのか
といった条件を考慮して生産条件を設定することが重要となります。今回のようにassimeeを使ったシミュレーションを活用することで、さまざまな生産条件を比較できます。
例えば、製品Aの工程分割を変更し、
- 10分の作業を分割しない場合
- 5分ずつの2工程に分ける場合
- 3分、4分、3分の3工程に分ける場合
- 1分単位の工数に分ける場合
を比較すれば、工程の区切り方が製品Bへの応答時間に与える影響を確認できます。また、製品Bの注文頻度を変更することで、
- 作業員Aがどの程度ラインAを離れるのか
- 製品Aの生産量がどの程度低下するのか
- 製品Bの納期をどこまで短縮できるのか
- 応援要員を追加する必要があるのか
といった点も検証できます。さらに、作業員Aが応援に入る条件を、
- 製品Bの注文が1件入ったら応援する
- 製品Bの仕掛品が一定数を超えたら応援する
- 納期が一定時間以内の注文だけを優先する
といったより複雑な形に変更して検証することも可能です
まとめ
今回のモデルでは、製品Aの組立中に製品Bの作業を割り込ませる生産ラインを再現し、応援作業が通常品の生産量や納期、作業員の稼働率へ与える影響を事前に確認し、現場に適した優先生産のルールや人員配置を検討する方法について解説しました。
このようにassimeeでは組立工程を細分化し、作業員が処理する工数として設定することで、
- 通常作業の一時中断
- 優先製品の応援
- 別ラインへの応援
- 複数作業員による共同作業
- 応援終了後の作業再開
といった、現実の製造現場で発生する複雑な動きをシミュレーションし、生産計画や生産計画の検証に役立てることができます。
assimeeでは、実際の製造プロセスをモデル化し、シミュレーションすることで、プロセスの見える化や潜在的な課題の洗い出しを行うことができます。製造プロセスのデジタル化や課題解決でお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。