概要
製造現場や物流現場では、部品や製品の搬送にAGV(無人搬送車)が広く利用されています。搬送能力が不足している場合、「AGVの台数を増やせば、もっと多く搬送できるのではないか」と考えがちです。しかし、実際の工場ではAGVが自由に走行できるとは限りません。
例えば、
- 複数のAGVルートが1つの場所へ合流する
- 交差点では同時に1台しか通行できない
- 狭い通路ではAGV同士がすれ違えない
- 安全上の理由から特定区間への同時進入が禁止されている
といった制約があります。このような場所が搬送のボトルネックになっている場合、AGVを増やしても搬送量は増えません。むしろ、待機するAGVが増えるだけで、設備投資に対する効果が得られない可能性があります。そのためAGVの台数を検討する際には、単純な台数や1台あたりの搬送能力だけではなく、走行ルートや合流地点、通路の制約まで含めてライン全体を評価することが重要です。今回はassimeeを使って、3つのAGVルートが合流し、その先に1台しか進入できない区間が存在する搬送ラインを再現します。さらにAGVの台数を変更してシミュレーションを行い、AGVを増やしても生産量が増えるかどうかを検証します。
モデル
今回用意したモデル以下の通りで、工場内で3種類の製品(A、B、C)を生産しています。

それぞれの製品は異なる場所で生産され、完成後はAGVに積載して出荷場所まで搬送します。そのため、工場内には3つのAGV搬送ルートが存在します。各AGVはそれぞれのルートを走行しますが、出荷場所の手前で3つのルートが1つに合流します。
3つの搬送ルートが1つに合流
今回のモデルで重要なのが、この合流地点です。3つのルートから到着したAGVは、すべて同じ出荷場所へ向かいます。しかし、合流地点から出荷場所までの区間は通路が狭く、安全上の理由から、
同時に1台のAGVしか進入できない
という条件を設定します。
そのため、すでにAGVがこの区間を走行している場合、別のAGVが合流地点へ到着してもすぐには進入できません。
先行するAGVが、
- 出荷場所まで移動
- 搬送を完了
- 制限区間から退出
するまで、後続のAGVは合流地点の手前で待機します。先行するAGVが出荷区間から退出すると、次のAGVが進入できるようになります。
AGV台数を増やしたらどうなるか
このような搬送ルートに対して、生産量を増やすためにAGVを増加することを考えてみます。AGVが少ない状態であれば、「AGVが足りないため製品を運べていない」可能性があります。その場合はAGVを増やすことで搬送能力が高まり、生産量の増加が期待できます。
しかし、今回のモデルでは、合流後の区間に1台しか進入できません。そのため、AGVを増やしたとしても、出荷場所へ向かう区間の処理能力そのものは変わりません。この条件で実際にどのような結果になるのか、シミュレーションで確認してみましょう。
シミュレーション結果
まず、基準となる条件(AGVが各1台)でシミュレーションを実行します。


ステータス推移を確認すると、1台のAGVが出荷場所へ向かっている間、別のAGVが合流地点の手前で待機していることが確認できます。さらに別ルートのAGVが到着すると、そのAGVも待機します。そして、先行するAGVが制限区間から退出すると、待機していた次のAGVが出荷場所へ向かいます。この結果から、「1台が通行している間は他のAGVが待機する」という設定が正しく再現されていることが分かります。
シナリオ比較でAGV台数を変更して比較する
次にassimeeのシナリオ比較機能を使って、AGVの台数を変更した場合の結果を比較します。
今回は、
- 2台
- 3台
- 4台
- 5台
とAGVを段階的に増やしてシミュレーションします。通常であれば、AGVの台数を増やすことで搬送能力が高まり、生産数も増えることが期待されます。

しかし、結果を見ると、AGVを増やしても生産数はほとんど変化しませんでした。
なぜAGVを増やしても生産量が増えないのか
原因は、合流地点から出荷場所までの制限区間にあります。この区間には常に1台しかAGVが進入できないため、AGVの台数を増やしても、この区間を通過できるAGVの数は増えません。つまり、今回の搬送ルートではAGVの台数ではなく、出荷場所へ続く共用区間の通行能力が搬送能力の上限を決めています。AGVを2台から3台、4台、5台へ増やしても、出荷場所へ向かえるAGVは1台だけのため、生産数は増えず合流地点で待機するAGVが増えるだけになります。これは典型的なボトルネックの例です。
改善すべきなのはAGV台数ではなくレイアウト
この結果から、今回のラインで生産量を増やしたい場合には、AGVを追加するだけでは十分でないことが分かります。改善対象として考えられるのは、例えば次のような項目です。
- 出荷区間を拡幅して複数台が通行できるようにする
- 往路と復路を分離する
- 別の出荷ルートを追加する
- 出荷場所を複数設置する
- 合流地点の優先制御を見直す
- AGVの走行速度や荷下ろし時間を改善する
例えば、現在1台しか入れない区間を2台まで通行可能にした場合、生産量がどの程度増加するのかを追加でシミュレーションすれば、レイアウト変更の効果を事前に確認できます。AGVを1台追加する場合と、通路を改修する場合の効果を比較すれば、設備投資の判断材料として利用することもできます。
「AGVが足りない」とは限らない
実際の現場でAGVが何台も待機していると、「AGVが混雑しているから、もっと台数が必要なのではないか」と考えてしまう場合があります。しかし、待機が発生している原因がAGV不足とは限りません。
今回のモデルのように、
- 狭い通路
- 合流地点
- 交差点
- 荷下ろし場所
- 積み込み場所
などがボトルネックとなっている可能性があります。この状態でAGVだけを追加すると、混雑がさらに悪化することも考えられます。そのため、AGVの導入台数を検討する際には、「何台必要か」だけでなく、「なぜ現在のAGVが待っているのか」まで確認することが重要です。
まとめ
今回の記事では、3つのAGV搬送ルートが1つに合流し、その先に1台しか進入できない区間を持つ工場をassimeeで再現しました。シミュレーション結果から、出荷場所へ1台のAGVが向かっている間は他のAGVが合流地点で待機し、先行するAGVが退出してから次のAGVが進入する動きを確認できました。さらにシナリオ比較機能を使ってAGVを2台、3台、4台、5台と増やしたところ、AGV台数を増やしても生産数は増加しませんでした。これは、AGVの台数ではなく、合流後の1台しか通行できない区間がライン全体のボトルネックになっているためです。
このようにassimeeを活用することで、
- 複数ルートの合流
- 交差点での待機
- 特定区間への進入台数制限
- AGV台数による搬送能力の変化
など、実際の工場で発生する複雑なAGVの走行条件をモデル化できます。AGVを増設する場合とレイアウトを変更する場合を事前にシミュレーションで比較することで、どの改善策が最も効果的なのかを現場で試すことなくに検証することが可能です。
assimeeでは、実際の製造プロセスをモデル化し、シミュレーションすることで、プロセスの見える化や潜在的な課題の洗い出しを行うことができます。製造プロセスのデジタル化や課題解決でお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。