複数ラインに対する生産計画のシミュレーションの解説

ー概要ー

今回の記事では前回の記事に続く形で、製品を生産する生産計画をシミュレーションする方法について解説します。単一ラインだった前回と比較して、複数の生産ラインを用意する場合、生産条件の違いとして作業員の生産効率の違いを考慮する場合に考慮しない場合と比べてシミュレーションにどんな差が出て来るのかを解説します。

ーモデルー

今回使用するモデルは以下の図のようになります。4つの生産ラインを再現するため、部品置き場から分岐し、加工ラインが4プロセス設置したモデルとなっています。

このモデルでも前回と同様に、段取り替え時間は「60分」、モデル内の入荷は在庫の出庫とみなして考えます。

生産計画

モデルを作る前に生産計画を用意します。前回と同様、単一製品の生産計画を準備します。
生産する製品:製品000
必要な部品:製品000用部品が1個
生産数:2000個
時間当たりの生産数:600個(平均処理時間0.1分)のラインを4並列で2400個
段取り替え時間(立ち上げ時間):60分
この計画に応じてモデルを設定していきます。簡単のため不良品は発生しない前提とします。

モデルの作成

入荷プロセス:
プロセス名を「000部品出庫」へ変更、

生産計画を設定:

生産計画のうち部品の入庫数は入荷プロセスに設定します。詳細設定から「入荷データを直接入力」を選び、以下の図のように「0分」に2000個の「製品000用部品」が入荷するように設定します。

これにより、0分の時点で2000個の「製品000用部品」がプロセスに入荷します。
*この設定は、他のプロセスの設定より先に行ってください。

置き場プロセス:
プロセス名を「001部品置き場」へ変更、容量を「10000個」と設定

分岐プロセス:
プロセス名を「002分岐」へ変更、処理時間を「0分」、作業人数を「1人」と設定
*処理時間を「0」とすることでパススルーとなります。

分岐条件:
ランダム設定(変更せず)

分岐先として4つのプロセスを設置:
分岐先として4つの加工プロセスを用意し、加工のライン4つを再現します。この時、出力にライン1など、付加名称を付けることで出荷の分析がやりやすくなります。

加工プロセス:
プロセス名を「301加工ライン1」へ変更、処理時間を「0.1分」、作業人数を「1人」と設定、
対象パーツ名称を「製品000用部品」、個数を「1個」、
出力パーツ名称を「製品000ライン1」、個数を「1個」と設定
詳細設定より以下の図のように段取り替え時間を「60分」、段取り替えグループの効率を「1」、人数を「1人」を下図のように設定

加工プロセス:
プロセス名を「302加工ライン2」へ変更、処理時間を「0.1分」、作業人数を「1人」と設定、
対象パーツ名称を「製品000用部品」、個数を「1個」、
出力パーツ名称を「製品000ライン2」、個数を「1個」と設定
詳細設定より「301加工ライン1」と同様に段取り替え時間を「60分」、段取り替えグループの効率を「1」、人数を「1人」と設定

加工プロセス:
プロセス名を「303加工ライン3」へ変更、処理時間を「0.1分」、作業人数を「1人」と設定、
対象パーツ名称を「製品000用部品」、個数を「1個」、
出力パーツ名称を「製品000ライン3」、個数を「1個」と設定
詳細設定より「301加工ライン1」と同様に段取り替え時間を「60分」、段取り替えグループの効率を「1」、人数を「1人」と設定

加工プロセス:
プロセス名を「304加工ライン4」へ変更、処理時間を「0.1分」、作業人数を「1人」と設定、
対象パーツ名称を「製品000用部品」、個数を「1個」、
出力パーツ名称を「製品000ライン4」、個数を「1個」と設定
詳細設定より「301加工ライン1」と同様に段取り替え時間を「60分」、段取り替えグループの効率を「1」、人数を「1人」と設定

出荷プロセス:
プロセス名を「004出荷」へ変更、
4つの加工プロセスから出荷へ合流

ーシミュレーションー

モデルを作成したら、シミュレーション時間の時間窓を「10分」に変更し、名前を付けて保存を行います。その後、シミュレーションタブに移動し、シミュレーション実行時間を「180分」(3時間)に設定して「シミュレーションを実行」ボタンを押します。設定に問題がなければ、以下のようなグラフが表示されます。
*表示されない場合は設定を見直してください。
ラインごとに出荷数が色分けで表示されます。
*表示されない場合は設定を見直してください。
ラインごとに出荷数が色分けで表示されます。

また、グラフの右下をクリックして「品種別総合出荷数」や「品種別総合出荷割合」を見てみましょう。

このシミュレーションでは生産効率など加工のパラメーターが全て同じため、25%ずつの生産量となっていることが分かります。この状態は、実際の工場で行われているケースに当てはめると、時間当たりの標準生産数を全ての生産ラインに適用した場合に相当すると考えることが出来ます。しかし、実際には作業員のスキルや経験によって生産効率(モデル中では処理時間)が異なる場合があり、稼働中に頻繁に生産計画を見積もり直すことに繋がっています。assimeeでは生産ラインごとに条件を変えてシミュレーションを行うことが可能です。次は、ラインごとに処理時間を変えてシミュレーションしてみましょう。これにより、より現実に近いシミュレーションが可能となると考えられます。

ー生産ラインごとに生産効率が異なる場合ー

先ほどは標準生産数を使った形でしたが、次に生産ラインごとに時間当たりの生産数(生産効率)を変えたシミュレーションを行う方法を解説します。また、後で比較を可能とするため以下の方法でモデルを複製した上で、設定を変更することにします。

下図のようにダッシュボードのモデル一覧から「コピーする」を選択すると、元のモデル名にCOPYを付けた名前で、モデルが複製されます。テンプレートとなるモデルがある場合、入力のコストを下げることが出来ます。

モデルを複製したら編集モードで、設定を変更して行きます。(モデル名はそのままでも問題はありませんが、区別がつくように変更してください。)

モデルに適用する生産計画は下記の通り変更しないので、入力を変更する必要はありません。
生産する製品:製品000
必要な部品:製品000用部品が1個
生産数:2000個
時間当たりの生産数:600個(処理時間0.1分)
段取り替え時間(立ち上げ時間):60分

次に生産効率を加工プロセスのパラメータ、「処理時間」を使って、以下のように設定します。やや、極端な条件付けですが、熟練者と新人が混在することを想定しています。*段取り時間や、対象パーツ、出力パーツの設定は変更しません。

「301加工ライン1」:処理時間0.05分(時間当たり、生産数1200個に相当)
「302加工ライン2」:処理時間0.10分(時間当たり、生産数600個に相当)
「303加工ライン3」:処理時間0.10分(時間当たり、生産数600個に相当)
「304加工ライン4」:処理時間0.15分(時間当たり、生産数400個に相当)

以下が、設定を反映したモデルとなります。

編集が終わったらモデルを保存し、シミュレーション時間の時間窓を「10分」であることを確認してから、シミュレーションタブに移動し、シミュレーション実行時間を「180分」(3時間)に設定して「シミュレーションを実行」ボタンを押します。設定に問題がなければ、以下のようなグラフが表示されます。


*表示されない場合は設定を見直してください。
先ほどと同様にラインごとに出荷数が色分けで表示されますが、生産数が大きく異なることが分かります。詳細を確認して行きましょう。


以下のように全体の結果を切り替えて「品種別総合出荷数」から生産数を確認します。生産割合は「品種別総合出荷割合」から確認することが可能です。。今回のモデルでは以下の表のような生産数と生産割合となりました。

生産効率の高い「301加工ライン1」「304加工ライン4」の約3倍の数を生産していることが確認できます。

また、生産効率の変更前のモデルと変更後のモデル所要時間を比較してみましょう。以下のように「004出荷」のアイテム数の推移グラフから確認が可能で、所要時間の比較を行うと以下のようになります。*分岐がランダムなため完全に一致しない可能性があります。

このように、全てのラインに対して均一に標準生産数を使った場合(左)よりも、個々の生産ラインの生産効率を個別に設定した場合(右)の方が、作業が早く終わっていることが分かります。この生産数の差にから来る時間差が、事前の生産計画からずれが生じる原因となっています。今回は処理時間だけを変更しましたが、個々のラインの段取り時間などを変更することで、より詳細な設定とシミュレーションによる検討が可能となります。

ーまとめー

今回は複数の生産ラインを用意した場合の生産計画の検討の方法について解説しました。また、ラインごとに生産効率を変えることで、シミュレーションがどう変化するかを確認しました。加工作業は時間当たりの生産数に標準化されている場合が多いのですが、実際には作業員のスキルや経験等によって生産効率(モデル中では処理時間)が、ずれる多く、稼働中に頻繁に生産計画を見積もり直し、生産管理の業務量の増加にも繋がっています。これに対して、assimeeを使うことで、生産計画のシミュレーションが簡単にできるほか、個々の作業効率などパラメータを容易に変えることが出来るので、より正確な生産計画を簡単に立てることが可能になります。

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