J-クレジットの取得

概要

今回の記事では前回の記事に引き続き、J-クレジットの取得についてJ-クレジット制度のHP上で公開されている資料を基に解説します。

J-クレジットの考え方

下図はJ-クレジットの認証についての概略図となります。J-クレジットは削減プロジェクトを実施した場合と、実施しなかった場合の排出量を比較し差分を取ることでクレジットの量を計算します。削減プロジェクトとして省エネ機器の導入を考えると、図中の現在の排出量とは省エネ機器を導入した後の排出量を指しますが、ベースライン排出量は省エネでない古い機器を使用し続けた場合の排出量であって、プロジェクト実施前の排出量でないことに注意が必要です。つまり、現在の排出量は測定値であり、ベースライン排出量は推定値となるので、何らかの方法でシミュレーションを行う必要があると考えられます。

J-クレジットを作るには

以下のような特徴があります。

・参加事業者の制限なし
大企業、中小企業、地方自治体、地域コミュニティなどだれでもJ-クレジットを創出することが出来ます。

・申請の遡及が可能
プロジェクト実施日は申請日から2年間遡ることが可能

・各種補助金の利用が可能
設備導入のための補助金の需給はOK(*環境省の補助金はダブルカウントになるため除く)

・様々な設備や事業が対象
省エネルギー
 ボイラー、照明、空調、ヒートポンプ、コジェネレーション、生産設備の省エネ
再生可能エネルギー
 木質バイオマス、太陽光発電、バイオ燃料
廃棄物の利用
 食品廃棄物の堆肥化
森林による吸収
 森林経営活動

また、プロジェクトには「通常型」と「プログラム型」があります。

・通常型
説明:1つの工場・事業所等における削減活動を1つのプロジェクトとして登録する形態。
(複数の工場・事業所をまとめて1つの通常型プロジェクトとすることもできるが、プロジェクト登録後に新たに工場・事業所等を追加することは、原則できない)
想定される登録者:工場や事業所を運営する企業や自治体

・プログラム型
説明:家庭の屋根に太陽光発電設備を導入するなど、複数の削減・吸収活動を取りまとめ1つのプロジェクトとして登録する形態。(随時、削減・吸収活動を追加することが可能)
想定される登録者:補助金を交付する自治体、農協などの組合、燃料供給会社、太陽光・コジェネレーション設備販売会社、植林プログラム

また、方法論として2024年7月の時点で71の方法が承認されていて、利用可能となっています。ここでいう、方法論とは、温室効果ガスを削減する技術や方法ごとに排出削減算定方法やモニタリング方法等を規定したものとなっており、 内訳としては省エネルギー等43、再生可能エネルギー11、工業プロセス5、農業6、廃棄物3、森林3となっています(詳細は資料)。以下の図はプロジェクト別、方法論別の削減量を示しています。

J-クレジットの認証

J-クレジットはプロジェクトの計画と登録審査、プロジェクトの実施、クレジットの認証の3つのSTEPからなります。STEP1ではプロジェクトを計画し、登録審査をJ-クレジットで受けることが必要です。STEP2では現在の排出量とベースライン排出量の算定を行います。STEP3では下図のように、J-クレジットはクレジットの管理者と外部の審査機関による審査を組み合わせてクレジットの認証を行います。

現在、クレジットの認証を行っているのは、以下の4機関となります。

  • 一般社団法人 日本能率協会(JMA)地球温暖化対策センター
  • 一般財団法人日本品質保証機構
  • 一般財団法人日本海事協会
  • ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社

また、審査可能な方法論は以下の5分野に分類されており、認証が可能な機関が限られる分野もあります。

  • EN:エネルギー分野
  • IN:工業プロセス分野
  • AG:農業分野
  • WA:廃棄物分野
  • FO:森林分野

まとめ

今回はJ-クレジットの作り方(認証の受け方)について解説しました。J-クレジットを取得するには、プロジェクトを実施後の現在の排出量に加えて、実施せずに現在の状況(製品の生産など)になったと仮定した場合の排出量の推定が重要になってくるため、どちらの場合にもシミュレーションが重要になると考えられます。assimeeではそのような場合のシミュレーション方法について研究開発を続けています。次回は、J-クレジットの具体的な売買方法と購入方法、使い方について解説します。

assimeeは、製造プロセスや物流プロセスをモデル化し、シミュレーション結果を活用して、現実に即したサプライチェーンの排出量を正確に算定することが可能です。近年では、生産技術の担当範囲が拡大しており、カーボンニュートラルに向けた排出量の算定業務も生産技術が担当するケースが増加しています。このように業務増加によって、負担が大きくなっている担当者様、複雑な算定業務でお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。