J-クレジットとは?

概要

この記事では、国が運営するJ-クレジットについて解説します。J-クレジットは、日本政府が保証するコンプライアンス・クレジットで、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2などの排出削減量、適切な森林管理によるCO2吸収量を「クレジット」として国が認証・発行する制度です。政府は2030年までにカーボンニュートラル(ネットゼロ)を達成することを目標としており、カーボン・クレジットを活用したカーボン・オフセットがその実現に向けた重要な手段となると期待されています。今後、企業や団体は、このクレジットを含むカーボン・クレジットを活用することで、GHG削減目標の達成を支援し、排出削減に貢献することが求められと考えられます。

仕組み

J-クレジットはかつて存在した、国内クレジット制度とオフセット・クレジット(J-VER)制度が発展的に統合した制度で、国により運営されています。下図はJ-クレジットの概念を図にしたものです。

J-クレジット制度は、GHGの削減やCO2の吸収をクレジットとして認証し、それを取引可能にする仕組みで、次のように運用されています。

  • 排出削減/吸収活動(つくるひと):
    企業、自治体、個人が再生可能エネルギーの導入や省エネルギー技術の実施、適切な森林管理などにより、温室効果ガスを削減・吸収するプロジェクトを行います。
  • クレジットの認証(J-クレジット制度):
    プロジェクトの結果、どれだけGHGを削減または吸収したかを第三者検証機関が検証し、その結果に基づき、管理事務局がクレジットを発行します。
  • クレジットの取引(つかうひと):
    発行されたクレジットは、企業や団体が自らのカーボン・オフセットや目標達成に使用でき、余剰分は市場で販売することが可能です。購入者はその資金を、さらなるGHG削減プロジェクトの運営資金として活用できます。この仕組みは、排出削減を促進し、持続可能な活動を支援する役割を果たしています。

このように、GHGの削減活動を通じてJ-クレジットを取得することで、インセンティブが発生し、企業や団体が排出削減や吸収活動に積極的に取り組む動機づけとなります。これにより、個々の活動が集約され、日本全体としてのGHG排出削減に寄与すると考えられます。J-クレジット制度は、こうした持続可能な取り組みを支える重要な要素として、カーボンニュートラルの実現に向けた一助となっています。

J-クレジットは「相対取引」、「入札販売」、「市場取引」の3つの方法で取引されています。J-クレジット制度のホームページには、現在売り出し中のクレジット一覧が掲載されており、取引の詳細を確認することができます。しかし、一般の入札販売は廃止され、国が保有するJ-クレジット(主に個人向け太陽光発電補助制度によるもの)のみが取引されています。「市場取引」については、2023年10月に東京証券取引所がカーボン・クレジット市場を開設し、J-クレジットの売買が開始されました。

将来の展望など

J-クレジットの最新状況は、環境省が運営するホームページで確認することができます。ここには、現在の認証量と目標、登録プロジェクトの解説、クレジットの概要、売買方法、使用方法についての動画などが掲載されています。現状では、排出量の削減が義務化されていないため、J-クレジットは主に企業や団体の自主的な目標達成に活用されています。そのため、クレジット取引は必ずしも活発ではないものの、J-クレジットの発行量は着実に増加しています。

今後、CO2の排出量に価格を付け、排出量に応じた金銭的負担を求めるカーボンプライシングの一環として「排出量取引制度(ETS)」が導入される予定です。2023年度からはGXリーグの枠組み内で試行的な制度運用(第1フェーズ)が開始され、2026年度からは実効性を高めた本格稼働(第2フェーズ)を目指しています。

現在、東京証券取引所のカーボン・クレジット市場で取引されているのはコンプライアンス・クレジットであるJ-クレジットのみですが、将来的には、二国間クレジット制度(JCM)に基づくJCMクレジット、ボランタリー・クレジット、超過排出枠などの取引をカーボン・クレジット市場へ追加することが検討されています。これにより、より多様なクレジット取引が可能となり、カーボンニュートラルの達成に向けた手段が拡充される見込みです。

まとめ

この記事では、日本で最も一般的とされるカーボン・クレジットであるJ-クレジットの概要について解説しました。現在は排出枠の義務化がないため、取引はまだ活発ではありませんが、発行量は着実に増加しています。将来的に排出枠が義務化された場合、カーボン・クレジットの活用が一般的になると考えられるため、今から調査を進め、準備を行っておくことが非常に重要です。次回からは、J-クレジットの創出、売買について、数回に分けて詳しく解説する予定です。

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