サプライチェーン排出量の算定例(Scope1、2)

概要

今回の記事では環境省・経産省の提供するガイドラインに従って、実際にサプライチェーン排出量を計算する例について解説します。ガイドラインではサプライチェーン排出量を自社による排出と自社以外の排出に分けて計算しています。今回はScope1 とScope2の具体的な算定について解説します。
*以下、サプライチェーン排出量とはGHGプロトコルをもとに計算したScope1、2、3の排出量のことを指します。

直接排出(Scope1)

算定対象の範囲について

ガイドラインによる算定対象の範囲は、温対法に基づいた「温室効果ガス 算定・報告・公表制度」によって定められている算定対象が元になっていますが、範囲が広くなっています。差異としては、連結対象事業者、通常使用時のHFCの漏洩、建設機械や自家用自動車などによる排出量が挙げられます。
この他、貨物輸送に係る排出量について、輸送事業者と輸送事業者以外でのカテゴリ区分が異なっている部分があります。

温対法との差異

・連結対象事業者

国内および海外において、自社が所有する事業や支配している事業からの排出については、燃料の使用や工業プロセスによる直接排出が対象となります。実際の計算に当たっては温室効果ガス(GHG)の算定には温対法を活用しますが、算定対象範囲について法的な対応は以下のようになります。

  • 温対法に基づいたGHG排出量の算定:自社のみが対象
  • Scope1、2、3(サプライチェーン排出量)の算定:自社と連結対象事業者が対象

既存の温対法による算定では、算定対象は事業者単独であり、会計上の連結対象業者は含まれていません。しかし、サプライチェーン排出量の計算においては、これらの子会社の排出量も含まれます。

・HFC(ハイドロフルオロカーボン、フロン)の漏洩

個々の排出活動についても既存の法律と違いがあります。通常使用時のHFCの漏出は温対法の対象になっていませんが、こちらもサプライチェーン排出量の計算では対象となります(通常使用時のHFCの漏洩はフロン排出抑制法の対象となっています)。

・建設機械や自家用自動車

建設現場における建設機械の使用や、輸送事業者以外の事業者が所有している自家用自動車による排出は、温対法では算定対象外でしたが、サプライチェーン排出量の算定においてはScope1の計算に含まれます。

貨物輸送に係る排出量

貨物輸送に係る排出量について、輸送事業者と輸送事業者以外でのカテゴリ区分が異なり、以下の通りとなっています。

輸送事業者以外の事業者:

  • 自社への原材料の輸送 → Scope3のカテゴリ4、輸送、配送(上流)
  • 自社からの廃棄物の輸送 → Scope3のカテゴリ5、事業から出る廃棄物
  • 自社所有の自家用車 → Scope1(空輸送を含む全ての走行が対象)
  • 自社製品の輸送 → Scope3のカテゴリ4、輸送、配送(上流)またはカテゴリ9、輸送、配送(下流)

輸送事業者:

  • 自社への原材料の輸送 → Scope3のカテゴリ4、輸送、配送(上流)
  • 再委託先輸送事業者への再委託による輸送 → Scope3のカテゴリ4、輸送、配送(上流)
  • 自社からの廃棄物の輸送 → Scope3のカテゴリ5、事業から出る廃棄物
  • 自社所有の輸送手段 → Scope1(空輸送を含む全ての走行が対象)

自社で使用する原材料の輸送や生産した製品の輸送はScope3の算定に含まれますが、自社使用の原料や製品を自社所有の自家用車で輸送する場合はScope1の算定に含まれます。

連結対象事業者やオーナーとテナントの関係による案分

最後に、Scope1や後述するScope2の算定対象には連結対象事業者が含まれますが、通常は以下のように出資比率基準か支配力基準を使って連結対象事業者の排出量を案分し、Scopeの算定に繰り入れます。

  • 出資比率基準:連結対象事業者に対する出資比率(株主持分)に応じて算定します。
  • 支配力基準:支配下の事業からの排出量を100%算入します。支配力は財務支配力または経営支配力の有無で定義されます。

なお、ビルなどにおけるオーナーとテナントの算定範囲は以下のようになります。

  • 共用部についてはオーナーの算定に含まれます。
  • 専用部については、機器のエネルギー管理権(電源など)がどちらにあるかで決定します。

このようにして、ダブルカウントを排除して算定します。

算定方法や活動量について

算定は「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」を参照して行います。

温室効果ガス算定排出量(tCO2)=温室効果ガス排出量(tガス)×地球温暖化係数
温室効果ガス排出量(tガス)=活動量×排出係数(活動量当たりの排出量)

の二つの式に基づき計算します。例えば、燃料の使用の場合は活動量と排出係数を以下のようにして計算します。

活動量=燃料使用量(単位はトン、キロリットル、千立方メートルなど)×単位発熱量(GJ/トン、GJ/キロリットル、GJ/千立方メートル)
排出係数=炭素排出係数(tC/GJ)×変換係数(44/12)

燃料使用の算定に必要な単位発熱量や炭素排出係数は上記のマニュアル内で提供されており、いくつかの例を挙げると以下の表の通りとなります。また、変換係数は炭素の排出量を二酸化炭素へ変換するための係数です。

燃料の種類単位発熱量炭素排出係数
ガソリン33.4 GJ/キロリットル0.0187 tC/GJ
軽油38.0 GJ/キロリットル0.0188 tC/GJ
天然ガス(気体)38.4 GJ/千立方メートル0.0139 tC/GJ

よって、ガソリンを1キロリットルを燃料として使用した場合は

tCO2 = 1 × 33.4 × 0.0187 × 44/12 = 2.29トン

と計算できます。

このように、「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」には事業者が算定の際に活用できる排出係数が記載されています。

エネルギー起源の間接排出(Scope2)

算定対象の範囲について

温対法との差異

国内および海外において、自社が購入した熱・電力の使用に伴う排出が算定対象となります。Scope1と同様に、事業者単独で見た場合には原則として温対法における算定・報告・公表制度と同様の算定範囲となるほか、電力を使用する建設現場での施設、建設機械の使用による排出や、輸送事業者以外の事業者の場合、自社所有の自家用電気自動車の使用による排出等も含まれます。

また、温対法での電気の排出係数には、送配電ロスが含まれた需要端排出係数となっていますが、GHGプロトコルではScope3のカテゴリ3で算定すべき値となっています。したがって、厳密にはこのガイドラインとGHGプロトコルの間には差異があります。加えて、このガイドラインではScope2はCO2のみを対象としていますが、統計上、日本国内のエネルギー転換部門の排出量の99%はCO2であるため、ガイドライン外のGHGによる効果はほとんど無視できる値となります。

2元報告

最後にGHGプロトコルではScope2に関して2元報告を行うことを求めています。2元報告とは以下のような「ロケーション基準手法」と「マーケット基準手法」の2つの方法で計算することですが、本ガイドラインでは2元報告を求めていません。

これは、送電網が隣国と接続されている大陸の多くの国家と異なり、日本の電力市場は隣国と接続せず国内で閉じているため、系統網を元にした「ロケーション基準手法」と契約を元にした「マーケット基準手法」の間に大きな差がないためです。これに対して例えば、地元A国の電力会社Xと契約しているが、電力会社XはB国やC国から購入した電力を供給していたような場合には「マーケット基準手法」はA国基準の排出量係数で計算し、「ロケーション基準手法」はB国やC国を含んだ排出量係数で計算するため大きな差が出る可能性があります。
また、2つの基準の間には再生可能エネルギー由来など特定の電力を使用した証書を考慮するかしないかの違いもあります。

算定方法や活動量について

Scope2の算定も「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」を参照し、以下の式を使って計算します。

温室効果ガス算定排出量(tCO2)=温室効果ガス排出量(tガス)×地球温暖化係数
温室効果ガス排出量(tガス)=活動量×排出係数(活動量当たりの排出量)

環境省のHPには、電力ガスの供給業者の排出係数がエネルギー供給業者ごとに公表されています。事業者がScope2の算定を行う場合、以下のようにエネルギー供給業者から購入したエネルギー量(活動量)と排出係数を元に計算を行うことが可能です。なお、エネルギー供給業者が係数を公表していない場合は、環境省の提供する代替値を使用して計算します。

供給業者活動量単位排出係数
A電力会社kWh0.000429 (t-CO2/kWh)
Bガス会社千立方メートル2.05 (t-CO2/千立方メートル)
C冷暖房会社GJ0.0532 (t-CO2/GJ)

よって、電力を1000kWhをA電力会社から購入して使用した場合は

tCO2 = 1000 × 0.000429 = 0.429トン

と計算できます。

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→サプライチェーン排出量を算定する(Scope3)