カーボンニュートラル達成に向けてその2(目標設定と削減計画の設定と実行)

概要

前回に引き続き経済産業省のカーボンニュートラル達成のための手引き書に基づき、GHGの排出量削減のプロセスを解説します。この記事では削減目標の設定から削減計画の実行までの流れについて解説します。

目標設定

1. 大まかな目標を設定してゴールを決める

以下のような要素を考慮して削減目標を設定します。

  • サプライチェーンの目標
    自社の属しているサプライチェーンのOEMや主要取引先が公表している目標に準拠する
  • 業界の目標
    主要取引先が複数ある場合、業界団体の掲げている目標を参考に目標を設定する
  • 自社独自の目標
    業界団体が目標を設定しておらず、指針となるような目標がない場合はパリ協定の目標(2030年46%削減)など世の中から認められる数値を設定する

設定する目標は、取引先や他社の理解を得られるものでなければなりません。また、第三者機関の認定を受けることで客観的な評価を得ることが可能です。

2. 分析

自社の設備や稼働時間を考えて、削減できるポイントを抽出することを考えます。

  • 削減できない設備や時間帯の把握
    時間帯や生産ライン、設備ごとの稼働時間とエネルギー使用量の相関関係から削減できない設備や時間帯を抽出する。また、エネルギー使用量を減らすために稼働時間の平準化や工程の改善を検討する。そのために生産部門、環境部門などの横断的な体制を構築する。
  • 製造工程の見直し
    原材料からの排出量を二次データなどから把握、仕入れ量の圧縮や歩留まりの改善など工程の見直しをおこなう。
  • 排出が多い要因の把握
    設備の能力に対してエネルギー使用量が大きいなど要員を抽出する。例えば、適正な出力で運転されていない、ON/OFFの回数が多くて立ち上がり時にエネルギーを多く使用している。
  • 計画の策定へ

削減計画の設定

以下の要素を考慮して目標設定に合わせたロードマップを作成する。

  • 将来の売上予測
    自社の主力製品を把握し排出量との関係を比較する。
    例えば、エネルギー使用量が少ないが、売り上げに貢献している製品の増産、販売を検討する。
    ロットの増減で1個当たりの排出量を圧縮できる場合は可能かどうか検討する。
  • 人員の適正配置
    稼働時間の最適化でエネルギー使用量が減らせるのであれば、人員配置の見直しを検討する。
  • 設備投資時期の適正化
    処理能力が同等だがよりエネルギー使用量が少ない設備への更新を検討する。
    再生可能エネルギーなど、自家発電によるエネルギー購入量の削減を検討する。
  • 取引先との連携
    品質管理の観点から工程が削減できないか交渉する。
    端材の減少などによる自社の排出量削減努力が価格に反映できるか交渉する。

削減計画の実行

ロードマップに従って通常規模の投資を行う。

  • 工程改善
    つくり方、作業手順、モノの流し方などの改善によるリードタイム短縮や歩留まりを改善させます。
    また、設備運用方法を見直し、エネルギー使用効率を改善する。
  • 設備の効率化
    現在使用している設備の改造や使用方法の見直しによってエネルギー使用効率を改善する。
  • 設備更新に合わせた省エネ化
    省エネ補助金の活用などによる設備を更新してエネルギー使用効率を改善する。

以上のような工程改善や効率化を通じた省エネルギー対策でCO2の排出量を削減する。

大型投資

上記の削減計画を実行しても、削減量の限界が見える時があります。その際には、大規模設備更新や、製造プロセスが使用する燃料や原料の変更など大型投資が必要になることがあります。補助金や低利融資を活用し、使用エネルギーを新エネルギーへ切り替える、再生可能エネルギー設備やCO2回収設備を導入する、カーボンクレジットを購入するなど、更に踏み込んだ大規模な投資を行うことで、排出量を一層削減することが可能になります。

まとめ

今回の記事では、前回に引き続きカーボンニュートラル達成のための手引き書の後半部分に当たる、排出量削減計画とその実行に関する解説を行いました。カーボンニュートラルを達成するためには、生産ラインごと、設備ごと、稼働時間ごとなどに分けてプロセスの評価を行うことが不可欠です。
assimeeを使うことで、プロセスの評価を誰でも簡単に、かつ短時間で行うことが可能です。また、稼働率や燃料の種類に応じた排出量の計算なども簡単に出来るので、CO2の削減計画の立案、実行、評価において最適なツールとなっています。

assimeeは、製造プロセスや物流プロセスをモデル化し、シミュレーション結果を活用して、現実に即したサプライチェーンの排出量を正確に算定することが可能です。近年では、生産技術の担当範囲が拡大しており、カーボンニュートラルに向けた排出量の算定業務も生産技術が担当するケースが増加しています。このように業務増加によって、負担が大きくなっている担当者様、複雑な算定業務でお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。