概要
今日の記事ではGHG(温室効果ガス)排出量の算定とカーボンニュートラルの達成のために必要な情報収集、社内体制の整備とデータの収集について経済産業省が提供する製造業向けカーボンニュートラル達成に向けての手引書を基に解説します。カーボンニュートラルへの取り組みは決して一時的な流行ではなく、世界的な潮流であり、中長期的な企業経営に直結するため、経営者がカーボンニュートラルの意義や目的、政策や取引先との関係などを深く理解することが必要です。
社内体制
以下のような項目で社内の体勢を整えることが必要です。
0. 情報収集
カーボンニュートラルに関する情報を収集し、経営者がその意義や目的について理解し、社内にカーボンニュートラルへの取組のメリットやデメリットに関する情報を社内に共有します。また、カーボンニュートラルに対応する法令や行政の政策(法的な目標、炭素賦課金の導入)、取引先からの算定の要請などについて調査したり、セミナーなどに参加し情報を収集します。
カーボンニュートラルに取り組むメリット
エネルギー使用量や原価管理の見直しによる適正化
知名度や認知度の向上
社員のモチベーションの向上や採用行動でのインパクト
他社との差別化
資金調達環境の向上
1. 経営者のコミットメント
何のためにデータ収集して、排出量を算定し、削減するのかを経営者が明らかにすることが必要です。カーボンニュートラルを進めるための目標とそれを達成するためには、経営者のリーダーシップが初めの一歩となります。その上で、社内体制の整備や人材の育成を行うことになります。
2. 自社に適した体制の検討
経営者がリーダーシップを発揮して、直接もしくは既存の部署を活用し、カーボンニュートラルへの対応を進めます。カーボンニュートラルを進めるに当たっては専任部署の設置が必要です。特にサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル対応には自社の内外のデータ収集が必要なため、部門横断的な協力組織が必須となります。
3. 人材育成
当初はISO対応の既存部署等関連性の高い部署で対応をしつつ、必要なら人材の育成を行います。人員の確保が困難である場合は外部からの支援を検討します。
データの収集
データの収集は自社のみが対象のカテゴリーから順次行うのが良いと考えられます。
1. 全体排出量の把握
電気料金、ガス料金の伝票を収集。自社が使用しているエネルギー料金と契約しているエネルギー事業者の排出量係数からGHG排出量を算定して把握(Scope1とScope2の把握)。
2. 時系列使用量を算定
月別や日別など時系列に分けてエネルギー使用量を算定する。エネルギー使用量と稼働時間の相関、季節性などを把握する。
3. 区分毎使用量を算定
設備毎や生産ライン毎など、可能な限り区分を行いエネルギー使用量を算定する。どの設備の使用量が大きいか、ライン間の比較などを行う。
4. 稼働時間の把握
作業日誌などから設備や生産ラインの稼働時間を把握する。
5. 製品毎使用量の算定
製品製造時の稼働時間や使用設備からエネルギー使用量を把握、使用量の按分等を行って製品毎の使用量を算定し、GHG排出量としても算定する。⇒カーボンフットプリントのベースが得られる(自社の上下流の排出量の把握も必要)。
GHG排出量の算定例
ここでは簡単な条件下で算定を行います。
以下が排出量の算定式の概要となります。
活動量 × 排出量係数 = GHG排出量
ここで、活動量は電力使用量やガス使用量、排出量係数は電力契約やガス契約を行う供給業者別に算定された排出量係数を使用します。
年間使用量 | 契約 | 契約に応じた排出量係数 | GHG排出量 | |
電力 | 8,000,000 kWh | 中部電力 メニューB | 0.388 kg-Co2/kWh | 3,104 t-CO2 |
ガス | 1,300,000 Nm3 | 東邦ガス 都市ガス | 2.29 t-CO2/kNm3 | 2,977 t-CO2 |
まとめ
今回はカーボンニュートラルを達成していくため、製造業向けカーボンニュートラル達成に向けての手引書を基に情報の収集と社内体制づくり、段階的なデータの収集と算定例について解説しました。次回は今日に引き続き、明らかになったGHG排出量を使って削減のための目標を立て、実現していくための方法について解説します。
assimeeは、製造プロセスや物流プロセスをモデル化し、シミュレーション結果を活用して、現実に即したサプライチェーンの排出量を正確に算定することが可能です。近年では、生産技術の担当範囲が拡大しており、カーボンニュートラルに向けた排出量の算定業務も生産技術が担当するケースが増加しています。このように業務増加によって、負担が大きくなっている担当者様、複雑な算定業務でお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。