カーボン排出権取引の義務化

概要

経済産業省は2026年度から温室効果ガス(GHG)の「排出量取引」導入を決定しました。この制度にはGHGの排出量がCO2換算で年10万トン以上の企業に制度への参加を義務づける方針となっており、対象となる企業は、鉄鋼や電力のほか、航空や物流、食品製造など、大企業を中心に300~400社が対象となる見込みとなっています。

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排出量取引

排出量取引(ETS)とは企業ごとに「CO2排出枠」を割り当て、自社の排出量削減によって余った枠や、足りない排出権を売買すること、認定されたカーボンクレジットの購入による排出量の相殺を行うことができます。この枠内に収まらなかった場合、罰金などの罰則を与える制度となっています。ETSはアメリカのカリフォルニア州で実際導入されているほか、EU(EU-ETS)や韓国(K-ETS)、英国などで排出量の割り当てが行われています。
日本でも2030年までのカーボンニュートラルを目指し、2023年度に「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX 推進法)に基づき「GX(グリーン・トランスフォーメーション)リーグ」を開始し、一部企業が自主参加の形で制度設計(GX-ETS)が行われています。今後、日本政府は2026年度の排出権取引導入に向けて、来年の通常国会に関連法の改正案を提出する方針となっており、実際の取引を2027年度から開始することが見込まれています。

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対象企業と関連企業の広がり

この制度の直接対象となるCO2換算で10万トン以上のGHG排出を行なっている企業は300~400社とされていますが、排出量はサプライチェーン排出量とも呼ばれ、GHGプロトコルを元に計算されます。プロトコルには自家発電、自社車両の燃料などエネルギーの直接使用に伴う排出であるScope1、電力・熱・ガスの購入などエネルギーの間接使用に伴う排出であるScope2に加えて、エネルギー使用以外からの間接排出であるScope3が含まれています。このScope3には企業に納入される材料や部品の生産、輸送に伴う排出、廃棄物の処理に伴う排出などが含まれています。このため、対象となっている大企業だけでなく、サプライチェーンに属している多数の企業まで排出量を計算する必要性が広がっており、ある日突然、取引先から排出量の計算を求められることがありうることに注意が必要です。

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シミュレーションで排出量を計算可能なassimee

assimeeではプロセスシミュレーションに対応してScope1と2のCO2排出量の概算をすることのできる機能が実装されています。今回の排出量取引の義務化で、今後の企業活動におけるCO2排出量の計算と公開、削減が重要視される可能性がますます高まります。assimeeは物流倉庫や製造現場のプロセスで排出されるCO2を手軽に計算できるため、効果的な排出量削減に役立ちます。

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assimeeを使った電力消費によるCO2排出量計算の例輸送と人員によるCO2排出量計算の例