概要
製造現場では、投入する在庫量が生産量を大きく左右することがあります。
例えば紙コップの生産現場では、
- 材料在庫が少なすぎるとライン停止が発生する
- 多すぎると仕掛在庫が増え、保管スペースや管理コストが増加する
- 工程間のバランスが崩れ、待ち時間や滞留が発生する
といった問題が起こります。
そのため、「どれくらいの在庫量を投入するのが最適なのか」を把握することは、生産計画を立てるうえで非常に重要です。しかし実際には、こうした在庫量は経験や勘で決められることも多く、最適条件が十分に検討されていないケースも少なくありません。
そこで今回は、assimeeの「実時間モード」と「シナリオ比較機能」を利用し、紙コップ工場を例として、「1週間の操業で最も効率の良い材料入荷量」を探索する方法について解説します。
モデル
今回用意したモデルは、紙コップの生産ラインを再現しており、以下のような構成となります。

入荷した紙材料を切断し、
- 側面パーツ
- 底面パーツ
の2種類を作成します。
その後、
- 側面パーツは塗装工程へ送られる
- 底面パーツはそのまま搬送される
構成となっており、最後に両方を組み合わせて紙コップを完成させます。今回は同じ構成のラインが2本存在する想定です。また、週の初めにその週に必要な材料を全て入荷する仕組みを仮定します。
実時間モードの設定
今回のシミュレーションでは、assimeeの実時間モードを使用し、現実の工場に近い操業条件を再現します。
設定条件は以下の通りです。
- 稼働時間:8時〜17時
- 昼休憩:12時〜13時
- 稼働日:月曜日〜金曜日
- 土日:停止
このように、カレンダーと勤務体系を反映した条件で1週間の操業を行います。
設備停止条件
今回のモデルでは、現場で発生する定期的な停止を再現しています。
塗装機
- 1000ロットごと
(1ロット = 1000個) - 塗料補充のため5分停止
組立機
- 1000ロットごと
- メンテナンスのため30分停止
このように、
- 材料供給
- 設備停止
- 勤務時間
が複合的に影響する、現実に近いライン構成となっています。
シナリオ比較
今回は、「週の初めに投入する在庫量をどれくらいに設定するのが最適か」を検討するため、assimeeのシナリオ比較機能を利用します。比較する指標は生産量です。
まずはランダム探索を行う
最適な値が分からない状態で、最初から細かく条件を設定すると非常に手間がかかります。
そこでまず、
- 下限値:0
- 上限値:300
として、ランダム生成機能を使い、10個のシナリオを自動生成します。
これにより、
- どの範囲で生産量が伸びるのか
- どこで頭打ちになるのか
を大まかに把握できます。
ランダム探索の結果
ランダム生成によるシナリオ比較を行った結果、生産量は以下のようになりました。

加えて、それぞれの結果を確認すると、
- 在庫量が少ない場合は材料不足による停止が多発
- 在庫量が多すぎる場合は滞留在庫が増加
- 一定範囲で最も効率が高くなる
ことが確認できました。
また、結果を観察すると、「在庫量100個付近」に生産量のピークが存在しているらしいことが分かりました。
手動でシナリオ設定を行う
次に、このピーク周辺に対して手動でシナリオを作成します。
例えば、10個から20個刻みで190個まで10通りのシナリオを用意する、といったように、1回目より細かく条件を設定し、再度比較を行います。
2回目のシナリオ比較結果
2回目のシナリオ比較の結果は以下のようになりました。

2回目の比較では、生産量が最も良い条件を特定することができました。
このように、
- まずランダム探索もしくは一定間隔での探索で大まかな傾向を掴む
- その後、ピーク付近を詳細に探索する
という流れを使うことで、効率よく最適条件を見つけることができます。
シナリオ比較のメリット
シナリオ比較機能を利用すると、
- 在庫量
- 人数
- 搬送能力
- 稼働時間
- 故障頻度
など、さまざまな条件を同時に比較できます。
特に今回のような、
- 実時間モード
- 定期停止
- 複数ライン
を含む複雑なモデルでは、人間の感覚だけで最適条件を見つけることは非常に困難です。シミュレーションを利用することで、定量的な根拠をもって生産計画を立てることができます。
まとめ
assimeeを使うことで、
- 実際の勤務カレンダー
- 設備停止
- 在庫量
- 複数ライン
など複雑な条件を考慮した現実的なシミュレーションを行うことが可能です。また、シナリオ比較機能を利用することで、「どの条件が最も効率的なのか」を短時間で探索することができます。
assimeeでは、実際の製造プロセスをモデル化し、シミュレーションすることで、プロセスの見える化や潜在的な課題の洗い出しを行うことができます。製造プロセスのデジタル化や課題解決でお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。