概要
今回の記事では前回の記事で解説した電力や燃料の直接使用によるCO2排出量の計算に引き続き、assimeeを使ってScope3のCO2排出量を計算する方法を解説します。Scope3には全て15のカテゴリがありますが、assimeeではカテゴリ4の輸送(上流)やカテゴリ9の輸送(下流)、カテゴリ7の雇用者の通勤のCO2排出量を計算することが可能となっています。今回はScope3のCO2排出量(全温室効果ガスをCO2換算した排出量、以下CO2排出量)の計算を中心に解説します。
使用するモデル
今回使用するモデルは、下図のように前回と同じモデルを使用し、比較できるようにScope1と2の設定は同じ設定を活用します。モデルの作成とScope1と2の設定方法については前回の記事をご覧ください。
CO2計算とその設定
シミュレーションまで終了したら前回と同様に「カーボンニュートラル」タブをクリックします。
設定が終わったら「次に進む」をクリックするとSCOPE3の輸送に関する設定に進みます。
Scope3の内、入荷(上流)と出荷(下流)の輸送に関する設定
以下の画面が表示されます。ここでは、入荷と出荷時に利用する輸送方法の内、何%が自社所有か他社所有のトラックかを設定します。これは、自社のトラックの場合はScope1に計上し、他社のトラックの場合はScope3へ計上する必要があるためです。ここでは、入荷、出荷とも自社25%、他社75%と設定します。
貨物の輸送割合設定
次に輸送の詳細パラメータを設定します。入荷する部品の重さと輸送する距離、出荷する製品の重さと輸送する距離、および、それぞれを輸送するトラックの種別と積載率を設定していきます。それぞれは以下のような意味を持っています。
重さと輸送距離
輸送する荷物が重いほど、CO2が排出量が多く、距離が長いほど、やはりCO2が排出量が多くなります。ここでは環境省の計算方法に従い、荷物1個当たりの重さとその輸送距離を入力すると、内部で計算に使用する係数の違いに加味されます。
トラック種別
種別とは燃料の違いやトラックの大きさを示しています。一般的にトラックが大きいほど馬力や排気量などが大きいため排出量が大きくなりますが、大量の荷物を積めるので、同じ量の荷物当たりの排出量が減り、輸送距離当たりの排出量係数は小さくなります。
現在は以下の選択肢があります。
- 軽貨物車(ガソリン、最大2t)
- 小型貨物車(ガソリン、最大2t)
- 普通貨物車(ガソリン、2~4t)
- 小型貨物車(軽油、~1t)
- 普通貨物車(軽油、1~2t)
- 普通貨物車(軽油、2~4t)
- 普通貨物車(軽油、4~6t)
- 普通貨物車(軽油、6~8t)
- 普通貨物車(軽油、8~10t)
- 普通貨物車(軽油、10~12t)
- 普通貨物車(軽油、12~17t)
ここでは普通貨物車(軽油、12~17t)を選択します。
積載率
積載率はトラックがどれだけ荷物を積んでいるかの割合で、100%に近いほど効率の良い輸送が行われていることを示します。0から100%まで20%刻みで選択可能ですが、ここでは、どのトラックも60%を選択しました。なお、パラメータを選択することで自動的にCO2排出量が計算されます。入力が終了したら「次へ進む」を押します。
雇用者の通勤設定
以下の画面が表示されるので、雇用者の通勤によるCO2排出量の計算の設定を行います。
雇用者の排出量の計算は経産省の提供している通勤時の社員1人当たりの平均的な排出量の値を用いて計算します。これは総務省の区分に従い人口別に大都市(政令指定都市および東京都区部)、中都市(人口15万人以上)、小都市A(人口5~15万人)、小都市B(人口5万人以下)の4つの区分に分け、それぞれの通勤形態の違いを考慮した平均的な値を求めたものです。ここでは大都市を選択しましょう。*一カ所を選択すると全て同じ値となります。
設定が終わったら「完了」ボタンを押します。
各プロセスの排出量計算結果
計算結果を下図のように一覧表とグラフで確認することが出来ます。
*SCOPE1とSCOPE2部分の詳細な解説は前回の記事をご覧ください。
前回の結果に加えて、今回入力したSCOPE3部分、そして、自社のトラックでの部品輸送部分(SCOPE1)が入出荷プロセスに追加されています。
まとめ
前回と今回の記事で解説したように、assimeeではScope1とScope2に加えて、Scope3全体で15のカテゴリの内、生産ラインや物流ラインで良く利用される3つのカテゴリからのCO2排出量を計算することができます。電力の購入先の変更による排出量の変化、稼働率や雇用者(作業人数)が変わりラインが変更された場合の排出量の変化などをシミュレーションを行うことで手軽に知ることができます。これにより、CO2排出量を計算する業務を削減したり、より効率の良い設備の設定などを知ることなどが可能となっています。
assimeeでは、実際の製造プロセスをモデル化し、シミュレーションすることで、プロセスの見える化や潜在的な課題の洗い出しを行うことができます。製造プロセスのデジタル化や課題解決でお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。