CO2排出量計算機能の解説

概要

近年、地球温暖化が叫ばれる中、その原因と考えられるCO2など温室効果ガス(GHG)の排出量を減少させようとする取り組みが広がっています。代表的なものは、企業などから排出されるCO2の量と植林や排出権の取引等CO2を吸収させる量を同量とする取り組み(カーボンニュートラル)と、国単位で温室効果ガスの排出量を自助努力で削減し、パリ協定の目標を達成しようとする取り組み(ネットゼロ)です。このためには排出するCO2の量を知ることとが不可欠となっています。今日はCO2の排出量計算の概要と、CO2排出量を概算するassimeeの新機能について解説します。本記事は環境省のHPの情報を元に解説しています。

温室効果ガス排出量の計算

法規制

日本における温室効果ガスの排出量については、以下に挙げる法律で計算と報告を規定しています。なおフロンやメタンなどCO2以外の温室効果ガスは変換係数を用いることで、CO2に換算して計算する必要があります。

省エネ法

  • 対象はトラック200台以上の大手輸送業者や石油換算で年間1500キロリットル大量のエネルギーを利用する事業所、3000万トンキロ以上の大口荷主
  • CO2排出量の削減努力の義務付け
  • エネルギー使用量の報告の義務付け

温対法

  • 対象は省エネ法対象の事業所に加えて、従業員21人又は年間のCO2排出量が3000トン以上の事業者に排出量の計算と報告を義務付け
  • 国際基準に則ったCO2排出量の計算方法を定義(以下で説明します)

換算後のCO2排出量の計算式

温室効果ガス排出量=活動量×排出係数

CO2などの温室効果ガス排出量は活動量と呼ばれる量(例:製品生産量、電力使用量、輸送距離など)に排出係数をかけることで計算されます。排出係数は活動量ごとに定義・提供されている係数となっており、例えば、発電方法等が異なると同じ電力でも排出量係数が異なります。

換算後CO2排出量(単位:tCO2)=
(温室効果ガスごとに計算した排出量×それぞれのガスの地球温暖化係数)の合計

CO2以外の温室効果ガスを全てCO2に換算し一元的に扱うために地球温暖化係数(GWP)がCO2以外の温室効果ガスに定義されています。メタン(GWP=25)や一酸化窒素(GWP=298)、各種フロン(GWP=1000以上)となっており、例えば、メタンは25倍の量のCO2と等価として扱われます。換算後CO2排出量を全ての温室効果ガスに対して合計したものがいわゆるCO2排出量(単位:tCO2)と呼ばれる量となります。 後出するCO2排出係数は全てこのtCO2を単位とした議論となっています。

環境省の提供する排出係数

環境省が提供するCO2排出係数は以下のサイトで提供されています。*随時アップデートされるので注意してください。

全分野:https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/files/calc/itiran_2020_rev.pdf
電力会社:https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/files/calc/r05_coefficient.pdf

CO2排出量のScope(サプライチェーン排出量)

CO2排出量の計算は国際基準(GHGプロトコル)に基づき、以下の図のように3つのScopeに分けて計算します。それぞれに対してCO2排出量をそれぞれ計算する場合、環境省が提供するモデルを使って項目ごとに計算することが可能となっていますが、Scope3のように自社外の排出量が含まれる場合があります。

Scope1:自社の工場や倉庫内での燃料の直接使用による排出

自社内の発電設備や輸送機器、移動用車両などが使用する燃料から排出されるCO2の量を計算する他、セメントの製造や冷媒として使用されているフロンの漏洩など工業プロセスから排出されるCO2の量を計算します。

Scope2:外部から購入した電力による排出

自社内で使用する電力・熱・蒸気等のエネルギーのうち、外部の電力会社等の他社から購入した分についてCO2の量を計算します。なお、自家発電分はScope1での計算となります。

Scope3:その他の企業活動による排出

製品の部品や入荷する荷物の輸送など自社の上流側の排出や、製品の出荷後や出荷された荷物の輸送、使用後の廃棄、従業員の通勤や出張、投資活動などScope1や2に含まれない自社内の活動や自社に関連する他社の排出等を下図のように15のカテゴリーに分けて計算します。それぞれの排出量の詳しい計算方法は環境省のHPを参照してください。

assimeeを使ったCO2排出量の概算

Scope1とScope2

assimeeの新機能ではScope1とScope2のCO2排出量を計算することが可能となっています。まず、以下のようなサンプルモデルを用意して通常のシミュレーションを行ってみましょう。

次の図は300分のシミュレーションを終了したところです。この画面から「CO2排出量を計算(ベータ版)」ボタンを選択します。*ここで設定したシミュレーション実行時間がCO2排出量のためにも使われることに注意してください。

以下の画面はassimeeに新規に実装されたCO2排出量のための電力ソースの設定画面が立ち上がったところです。計算を使うためにはScope1と2の計算を行うための設定を行います。設定は

1.電力としてのエネルギー消費(自家発電と電力購入)
2.燃料としてのエネルギー消費

の2段階に分かれて行います。この画面では1.の電力としてのエネルギー消費によるCO2排出量を計算するため電力ソースの設定を行います。

Scope2の購入電力を選んでください。これは電力小分類から大手電力会社を選択(CO2係数は自動で選択されます)できる他、その他を選択することで新電力を選ぶことも可能(電力会社から提供されるCO2係数の入力が必要です)となっています。ここでは東京電力を選択しました。
Scope1の自家発電を設定するためには、燃料性発電機、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電から選択します。発電方法に対応する係数が自動的に選ばれますが、ここでは燃料性発電機を選択した上で、例としてCO2係数は0.0007を上書きして入力しています。
最後に購入電力と自家発電の割合を設定します。ここでは50%ずつと仮定しました。

上図のように入力を終了したら、「設定完了&次へ」をクリックします。
すると以下の様な画面が表示されます。

Scope1の発電機とScope2のCO2排出量(電力ソース分)が表示されます。排出量は加工プロセスと運搬(ベルトコンベア)プロセス別に計算されています。ここでは加工プロセスと運搬(ベルトコンベア)プロセスのカタログ消費電力を100kWとしていますが、消費電力を変更すると計算結果がリアルタイムに変わります。

今回の設定では
・シミュレーション時間(稼働時間)は300分
・加工プロセスの平均稼働率50%
・運搬(ベルトコンベア)プロセスの平均稼働率50%

となっており、加工プロセスと運搬(ベルトコンベア)プロセスのScope1(発電機分)の排出量は0.09トン、Scope2の排出量は0.05トンと同じ値が出力されます。これによりScope1(発電機分)の排出量合計は0.17トン、Scope2の排出量の合計は0.11トンと出力されます。
*計算結果をそれぞれ四捨五入しているため、合計がずれているように見えています。

次にScope1の燃料消費分を計算に上記に加えます。何も入力しない状態では灰色になっている燃料直接使用の欄に燃料消費の数値を設定します。今回は、運搬(ベルトコンベア)プロセスで軽油を0.01キロリットル/hの燃費で使用すると仮定します。
燃料種別で軽油を選択し、燃費に0.01を入力することで、下図のようにScope1の直接使用の欄に0.06の値が表示され、合計が0.15となります。これにより、今回使用したモデルの300分の稼働に対してScope1の排出量の合計が0.24トン、Scope2の排出量の合計が0.11トンと計算できました。

「グラフで見る」ボタンをクリックすると次の図のようにプロセス別に分けて、Scope別に色分けされたCO2排出量の棒グラフが表示されます。

Scope3

Scope3は最も複雑な計算が必要なだけでなくユーザー側の入力準備が必要となります。現在assimeeではScope3の中でも物流倉庫や製造現場における材料・製品の輸送や組立、従業員の通勤に関するカテゴリーに絞って、実装作業を行っており、近日公開を予定しています。ご期待ください。

まとめ

以上のように新機能としてプロセスシミュレーションに対応してScope1と2のCO2排出量の概算をすることのできる機能がassimeeに実装されました。昨今の環境意識の増加で、今後の企業活動において、ますますCO2排出量の計算と公開、削減が重要視される可能性が高まっています。assimeeでは物流倉庫や製造現場のプロセスで排出されるCO2を手軽に計算できるため、効果的な排出量削減に役立ちます。ぜひ、一度お試しください。

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