概要
現代のサプライチェーンでは、「物流倉庫」が果たす役割はますます重要になっています。物流倉庫と一口に言っても、その機能や目的に応じてさまざまな種類が存在します。この記事ではシミュレーションツール「assimee」を用いて、物流倉庫のモデルを構築し、各形態ごとの工程を再現し、工程に潜むボトルネックを可視化する方法を解説していきます。全4回に分けて、以下の4タイプの倉庫をそれぞれ取り上げます
物流倉庫の種類
物流倉庫は以下の4つに大別されます。
| 種類 | 名称 | 特徴 |
|---|---|---|
| TC型 | 通過型センター(トランスファーセンター) | 保管をせず、仕分け・積み替えのみ |
| DC型 | 在庫型センター(ディストリビューションセンター) | 入庫して保管し、必要に応じて出庫・出荷 |
| PDC型 | 加工・在庫型センター(プロセスDC) | 保管に加えて組立・加工などの流通加工も実施 |
| FC型 | フィルフィルメントセンター | 通販に特化し、注文処理や返品対応まで一括管理 |
TC型
日本語では通過型センターと呼ばれており、倉庫の中で行先ごとの仕分けやトラックの積み替えのみを行う形態です。入荷した商品を長期保管したり、加工したりはしないため、DC型やFC型などと比べて行う作業が少なく、比較的小規模な倉庫になるのが特徴です。
DC型
一般的に倉庫と呼ばれるのはこの形態となります。入荷した商品を入庫して保管した上で、必要数を保管スペースから出庫して小売店や別な倉庫に向けて発送する形態となります。倉庫の中では商品の検品や出庫に必要な商品のピッキング、また包装やラベルの貼り付けなどの小規模な作業が行われます。
PDC型
精肉や魚肉の加工、部品の組み立てや設置、ソフトウェアのインストールなどDC型と比べて大掛かりな加工を倉庫内で行う形態です。倉庫の中では最も大掛かりな設備を擁しており、中で働く人数も多くなります。入庫や出庫のプロセスはDC型と同様となります。
FC型
通信販売用の商品の管理、ピッキング、配送などを行う形態です。FC型では入庫してある商品に対してユーザーからの注文を受けると対応する商品のピッキング、包装を行った上で発送します。この他、センター内では在庫管理や顧客のデータ管理、返品の対応、クレーム対応など、サービスがセンター内で全て完結します。
今回は最も単純なTC型物流倉庫(トランスファーセンター)から再現したモデルを作成してみましょう。
モデルの作成
本記事では、最もシンプルな物流倉庫の形であるTC型(通過型センター)をassimeeで再現します。TC型は、商品を一時的に受け入れて仕分けや積み替えのみを行い、保管はしないのが特徴です。スピーディーな配送や中継に特化しており、倉庫の規模や作業も比較的小規模になります。
モデルの条件
- 入荷した品目はまず解包される
- 解包された品目は、再度梱包される
- 梱包済の品目は仕分け処理され、行き先(A支店、B支店、C支店)ごとに出荷される
作成したモデルは下図のようになります。

図:モデル
シミュレーション
モデルの作成が終わったらシミュレーションを実行します。今回は、シミュレーション時間を「300分」にシミュレーションを行いました。シミュレーションが設定どおりに動いていれば、グラフから以下のような結果が確認できます。
- 入荷→解包→再梱包→仕分け→出荷の流れが途切れなく行われている
- 出荷数が目的地ごとに分散されている
- 生産推移に偏りや詰まりが見られない

図:累積生産推移

図:生産推移

図:ライン別生産数

図:生産割合
もし、偏りや詰まりが見られた場合は、そこにボトルネックがあると考えられます。
まとめ
今回は、物流倉庫の中でももっともシンプルな**通過型センター(TC型)**のモデルをassimeeで作成し、シミュレーションによってその動作を確認しました。
TC型のポイント
- 保管工程がない
- 処理内容は仕分けと積み替えが中心
- 短時間で通過・発送が完了する仕組み
このような流れをassimeeで再現することで、通過型センターの動きを視覚的に把握でき、ボトルネックの探索や、生産計画や物流設計の参考にすることができます。
assimeeでは、実際の製造プロセスをモデル化し、シミュレーションすることで、プロセスの見える化や潜在的な課題の洗い出しを行うことができます。製造プロセスのデジタル化や課題解決でお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。