概要
生産現場では、1人の作業者が複数の工程を順番にこなす手作業ラインが存在します。特に中小規模の工場やセル生産方式では、各作業の所要時間を「山積み表」という形で整理し、作業のバランスをとることがよくあります。
山積み表に基づく作業では、工程ごとの時間配分が明確になっている反面、特定の工程に作業の偏り(=ボトルネック)が潜在する可能性があります。これを実際に動かして確認するには、シミュレーションが有効です。
今回の記事ではこの山積み表に従った作業の流れを、assimeeでモデル化し、実際にシミュレーションを通じて工程全体のスムーズさとバランスを可視化します。
モデル
今回のモデルでは、以下のような製造工程を想定しモデルを作成します。
工場の構成
- 製品は、右側部品+左側部品の2つを組み合わせて完成。
- 各部品はそれぞれ3つのパーツから構成され、右側・左側の作業をそれぞれ1人の作業者が担当します。
- 各作業者は、あらかじめ決められた山積み表に従って作業を進めます。
山積み表の内容(左右どちらも同じ作業手順)
| 工程 | 作業内容 | 時間 |
|---|---|---|
| 1 | パーツ1を取り出し、ジグにセット | 30秒 |
| 2 | パーツ1をクランプ | 30秒 |
| 3 | パーツ2を取り出し、ジグにセット | 30秒 |
| 4 | パーツ3を取り出し、ジグにセット | 30秒 |
| 5 | パーツ2と3をクランプ | 30秒 |
→ 合計:150秒/1サイクル(片側部品)
完成した左右の部品は、最終的に別工程で結合され、1つの製品として出荷されます。

シミュレーション結果
今回のシミュレーションは、480分(8時間)で実行しました。以下のようにシミュレーション結果を確認することができます。


結果のポイント
- 作業は山積み表通りにシーケンシャル(順次的)に実行され、部品の組み立てが安定して進行すること
- 左右の部品の作業タイミングも均衡が取れており、どちらか一方に偏った滞留は発生しないこと
- 各サイクルにおいて待機時間や作業の詰まり(=ボトルネック)も確認されず、手作業工程としてのバランスが保たれていること
- 設定通り、2つの加工の間に作業バランスの偏りはないこと
このように、手作業の割り当てとタイミング、負荷バランスに問題がないことを定量的に確認できるのは、シミュレーションの大きな利点です。
まとめ
本記事では、assimeeを用いて山積み表に基づく作業配分モデルを構築し、その妥当性をシミュレーションによって検証しました。
今回のポイント
- 作業の順番と時間を定義した山積み表をそのままモデルに反映できる
- 各作業者の負荷や滞留を定量的に可視化できる
- 実運用前に、ボトルネックや不均衡がないかを事前に把握できる
現場では、「経験と勘」で決めた作業時間や配置が、実際には偏りを生んでいたというケースも少なくありません。今回のようなモデル化とシミュレーションを通じて、より根拠ある改善に結びつけていくことが可能です。
assimeeでは、実際の製造プロセスをモデル化したシミュレーションや、既存のVSM(バリューストリームマップ、物と情報の流れ図)を活用した直接的なシミュレーションが可能です。これにより、製造プロセスの「見える化」を実現し、潜在的な課題を明確にすることができます。製造プロセスのデジタル化や課題解決にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。