概要
実際の工場では、午前と午後で異なる製品を生産したり、工程の下流だけを切り替えたりするような時間帯ベースの生産ライン切り替えが行われることがあります。このような切り替えには、搬送タイミング・在庫振替・ラインの切り替えロジックなど、複雑な条件制御が必要です。
今回の記事では、生産プロセスのシミュレーションツールassimeeを用いて、「ある時刻を境にラインを切り替える」モデルをどのように構築するかを解説します。
モデル作成のポイント
今回作成したモデルは以下のようになります。

このモデルではラインを以下のように分けて構成しました:
- 前半部:共通の前加工工程
- 後半部:2本の生産ライン(Aライン / Bライン)に分岐し、それぞれ異なる加工ステップから構成
動作が始まると、以下のような条件でライン切り替えを実施します:
- 開始直後(0〜240分)は、生産ラインBのみ稼働
- 240分を境に、生産ラインAへ完全に切り替え
- 切り替え後は生産ラインBは使用しない(不可逆な切り替え)
assimeeでの実装ポイント
この切り替えを実現するために、assimeeでは以下を設定します:
作業カードの「稼働開始時間」指定
- 240分以降に稼働を開始するように生産ラインAの作業カードを設定することで、時間による切り替えを明示的に設定します。
優先度によるルーティング制御と無限容量の中継置き場の設置
- 分岐(005分岐)の優先順位を設定し、ラインAのカード(006ラインA)にラインB(012ラインB)よりも高い優先度を与えます。
- 分岐後に無限容量の置き場(007置き場)を配置し、送り出し先が待ちになってラインBへのワーク供給が止まらないリスクを回避します。
- この設定により、切り替え後は新しいワークは確実にラインAへ送られます。
振替ルートによる仕掛品の切り替え
- 切り替え時点までに生産ラインBの下流に搬送されていた仕掛品が残っている可能性があります。
- これらを回収し、ラインAの置き場(007置き場)へ振り替えるための専用ルート(019在庫振替以降)を用意します。
- この仕掛品振替にも稼働時間と優先度を設定し、制御を行います。
シミュレーション結果
シミュレーションを480分(=1標準稼働時間)で実行します。シミュレーションの結果は以下のとおりです。



ステータス推移や他のグラフを確認すると、以下の点が読み取れます。
- 前半(0〜240分):製品はすべてラインBで加工されている
- 後半(240〜480分):ラインAが稼働し、ラインBの作業は停止
- 分岐ルートや振替ルートも正常に作動し、仕掛品が適切に移動している
このように、当初の意図通りに午前と午後で工程全体が完全に切り替わっていることが、シミュレーション上でも明確に確認できました。
まとめ
時間帯やシフトに応じて生産ラインや工程ルートを切り替える運用は、現場では日常的に行われています。assimeeでは、
- 稼働開始時間
- 優先順位
- 振替処理の実装
- 分岐先の明示的制御
といった機能を活用することで、こうした時系列ベースの工程切り替えも再現可能です。複数の製品やラインを時間ごとに切り替える必要がある場合、assimeeのモデル化機能は極めて有効で、実際の工場に近いフローを再現し、業務に即した柔軟な改善検討が可能となります。
assimeeでは、実際の製造プロセスをモデル化し、シミュレーションすることで、プロセスの見える化や潜在的な課題の洗い出しを行うことができます。製造プロセスのデジタル化や課題解決でお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。