ETS

ETS(Emissions Trading Scheme:排出枠取引制度)とは、温室効果ガスの排出量に上限(キャップ)を設け、その枠内で企業間の排出権(カーボン・クレジット)を売買できる仕組みです。排出量が上限を下回った企業は余剰分を売却し、逆に超過した企業は不足分を購入することで、全体の排出量を効率的に抑制する市場メカニズムです。
アメリカのカリフォルニア州、EUや韓国などではすでにETSが導入されており、カーボンプライシングの中核的手法として機能しています。日本でも2026年度からの本格導入を目指し、「GX-ETS(グリーントランスフォーメーション排出枠取引制度)」の準備が進められています。これは、2023年度から始まった「GXリーグ」の自主的な排出量取引の仕組みを発展させたもので、まずは大規模排出事業者(電力・鉄鋼・化学・セメント・運輸など年10万トン以上の排出を行う事業者)を対象に制度化される見通しです。
GX-ETSでは、政府が業種別に排出量の目安を設定し、その枠に応じて企業が取引を行います。実績に応じたペナルティやインセンティブも導入される予定であり、企業には中長期的な排出削減戦略と情報開示の強化が求められます。これにより、日本でも排出削減への市場の関与が本格化し、カーボンニュートラル実現に向けた重要な一歩となります。企業はETSへの対応を経営戦略に組み込むことが今後ますます重要になると考えられます。