概要
現代の製造現場では、モジュール化された生産ラインが多くの場面で活用されています。これは、製品を構成するパーツ(モジュール)を共通化・規格化し、パーツを入れ替えることで多様な製品に対応する生産方式です。例えば、スマートフォンや自動車、家電など、外見は異なっても共通の内部部品を使いまわすことで、設計や製造の効率化を図ることができます。
モジュール生産のメリットと課題
| メリット | 課題 |
|---|---|
| ・多品種への柔軟な対応が可能になる | ・品目数の増加による在庫・管理コスト増加 |
| ・設計や工程の共通化による効率化 | ・不要なモジュール工程の発生 |
| ・短納期対応やカスタム対応に有効 | ・タイミングずれによるライン停止リスク |
今回は、このようなモジュール化による多品種ラインを、assimeeを使ってモデル化し、シミュレーションによりその特性や課題を可視化します。
モデル
今回のシミュレーションモデルでは、以下のような生産ラインを設定しています。
- モジュールA・B・Cの3系統があり、それぞれに3つのバリエーション(A1〜A3、B1〜B3、C1〜C3)があります。
- モジュールA・B・Cを1つずつ組み合わせて製品を構成するため、製品のバリエーションは 3×3×3=27種類 となります。
- 製品の構成はランダムに決定され、ラインに必要なモジュールが全て揃った時点で組立・出荷が行われます。
- 生産はモジュールBにモジュールAとモジュールCを取り付ける形で行われます。
完成したモデルは下図のようになります。
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シミュレーション結果
シミュレーション時間は 480分(8時間) に設定して、実行すると以下の結果が得られます。全体の生産数の他、単一の生産ラインだけを取り出してステータス推移を見ることも可能です。
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シミュレーションから得られた知見
- 27種類の製品がランダムに生産・出荷されていることを確認
- ステータス推移グラフから
モジュールの供給タイミングがランダムであるため、
「必要な3種類のモジュールが同時に揃わずに生産が待機している時間帯」が存在し、ボトルネック(タイミングずれによる生産停止)が発生していることを確認
生産ライン改善のヒント
このように生産ラインに発生する材料待ちの時間が可視化できれば、たとえば以下のような改善策を検討することが可能です:
- モジュール供給のバランスを調整する
- 一時的なバッファ(中間在庫)を設けて生産を滑らかにする
- 優先順位制御を導入して供給順を最適化する
- モジュールにタグをつけ、必ず3モジュールの組み合わせができるようにする
まとめ
本記事では、assimeeを活用して多品種対応型のモジュール生産ラインを再現し、その挙動をシミュレーションによって確認し、改善ポイントを洗い出しました。
今回のポイント
- モジュール生産ではモジュールの組み合わせにより製品バリエーションを拡張可能
- 生産手順のランダム性により、モジュール供給タイミングのズレによる停止が発生
- シミュレーションを元にライン設計の改善ポイントや在庫・供給戦略、生産手順の見直しが行う
このようにassimeeを使えば、複雑化する製造プロセスを視覚的かつ定量的に把握することができ、現場改善や設計段階での判断にも役立てることが可能です。
assimeeでは、実際の製造プロセスをモデル化し、シミュレーションすることで、プロセスの見える化や潜在的な課題の洗い出しを行うことができます。製造プロセスのデジタル化や課題解決でお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。