みずすましによる生産品回収を再現したモデル

概要

製造現場では、「みずすまし」と呼ばれる役割を持った作業者や搬送装置が存在します。みずすましとは、部品や材料を工程ごとに供給したり、完成品を回収したりする業務を担当する存在で、名前の由来は、水面を素早く動き回る昆虫「水すまし」に似ていることから来ています。
みずすましは、作業者が加工に集中できるよう、必要な部品をタイミングよく届け、完成品を迅速に回収していく重要な存在です。近年では、この役割をAGV(無人搬送車)が担うケースも増えており、自動化と省人化が進む中で注目されています。
今回の記事では、assimeeを使ってセル生産ラインでの製品回収プロセスを再現し、製品完成のタイミングに応じてAGVが動的に回収を行うモデルを構築しシミュレーションを行います。

モデル

今回のモデルは、セル生産方式で製品を生産し、完成品をAGV(みずすまし)が回収する構成となっています。現場ではこのような構成がよく見られ、特に少量多品種の生産現場で効果を発揮する運用方式です。

モデルの詳細構成
  • セル(作業ライン)は3つあり、前加工と後加工からなります。
  • 3つのセルの処理時間はそれぞれ異なります:
    ・ライン1の処理時間:前加工5分、後加工5分
    ・ライン2の処理時間:(前加工8分、後加工7分
    ・ライン3の処理時間:前加工10分、後加工10分
  • 各セルで製品の加工が完了すると、「情報札(チケット)」を使ってAGVに連絡が送信されます。
  • 連絡を受けたAGVは、完成した製品のあるセルまで移動し、製品を回収します。
  • 回収後、AGVは製品を積み下ろしエリアまで運搬し、その後出荷工程に引き渡します。

このモデルでは、セルごとに異なる生産速度に合わせてAGVが適切に稼働できるかどうか、そしてAGVの回収能力が生産全体の流れを妨げていないかを検証することが主な目的です。

シミュレーション

シミュレーションは480分(8時間)で行い、各ラインの生産状況とAGVによる回収動作を確認しました。結果として、製品が完成すると即座にAGVがセルへ向かい、製品を回収している様子がステータス推移図から明確に確認できました。

このことから、モデルは意図通りに機能しており、製品の完成に連動してAGVが的確に動作していることがわかります。


AGV台数による変化の比較

台数を増やす前に、今回のモデルで想定している前加工と後加工の処理時間、および480分間で生産可能な製品数を整理してみましょう。

  • ライン1:処理時間(前加工5分+後加工5分)=10分 → 480分で48個生産可能
  • ライン2:処理時間(前加工8分+後加工7分)=15分 → 480分で32個生産可能
  • ライン3:処理時間(前加工10分+後加工10分)=20分 → 480分で24個生産可能

このように、シミュレーション時間と処理時間のみで考えると、合計で104個の製品が生産可能となります。ただし、実際には各ラインの立ち上げ時間が必要で、それらを考慮すると、生産可能な個数は合計で101個となることが分かりました。先ほどのシミュレーション結果では101個が出荷されていないことが確認できました。これは、AGVによる輸送力がボトルネックになっていると考えられます。

そこで、AGVの台数を2台に増やして再度シミュレーションを実行してみます。

再度のシミュレーションでは100個の出荷が達成されました。これは、AGVの回収能力が向上したことで、製品の回収遅延が解消され、各セルが滞りなく稼働できた結果といえます。
このように、モデルの設定を柔軟に変更して再シミュレーションを実施できる点が、assimeeの大きな特徴です。現場の制約条件やボトルネックを想定しながら、繰り返しシナリオを検証することで、改善効果の見える化や施策の比較検討が容易になります。

まとめ

今回の記事では、セル生産方式における製品回収プロセスを、みずすまし(AGV)を使って再現するモデルをassimee上で構築しました。製品完成時に情報札を発行してAGVを呼び寄せることで、実際の現場で行われている搬送指示と同様の制御を再現することができました。また、AGVの台数を変化させて比較することで、搬送能力が生産効率に大きな影響を与えることが可視化され、改善余地のあるポイントを明確にすることができました。assimeeを活用すれば、このように搬送・人員・設備などの現場要素を組み合わせた動的なシミュレーションを行い、課題の可視化や施策の検証を効率よく実施することが可能です。

assimeeでは、実際の製造プロセスをモデル化し、シミュレーションすることで、プロセスの見える化や潜在的な課題の洗い出しを行うことができます。製造プロセスのデジタル化や課題解決でお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。

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